言葉と事例との組み合わせについて【2】「つながり」「硯」「クラウドファンディング」
東日本大震災の復興として、最初は応援のために始まった寄付や融資だとしても、あくまでもビジネスとして、しっかり「今」の時代に合わせた受け入れられ方を探し、実行している事例を、2018年3月11日発行の日経ヴェリタスの紙面で見つけることができました。
そこで、今週書く予定になっていた「つながり」「スマホ」「SNS」などとの関連はないかと考え、次のように書き始める記事が1つ、できあがりました。
「人生も経営も、すべては『つながり』が重要だと言えるでしょう。一方向的な行動、つまり相手のためになることができなければ、返ってくるものもない、つまり自分のためにもならない状態が続きかねません。
確かに今日は、以前より『つながり』の手段が増えたと感じられます。スマホ、それを介したSNSでのやり取りがあれば、より多くの人々、より広い地域のことを知ることができ、それが自分の得意とするビジネスで手助けできるのだとわかれば、より私たちの活動範囲は広がるのだろうと考えられます。」
記事からは、宮城県石巻市の「雄勝硯」がいかに誇れる産業であったかが読み取れます。また、安価では提供できないだけの理由があり、高度な技術が必要だったからこそ、なぜ震災前の状態になるよう「元に戻す」だけでは「成功」とは呼べないのかといった経緯についても紹介されています。
そのような状態、経緯などを読みながら、復興から発展、継続までをも考える重要さについて、文章でまとめました。
「『600年あまりの歴史を有し』『ガラスや陶器と違い石の加工には高度な加工技術が必要』なこの硯は、支援により流されてしまった工場が再建されても、『中国産の安価なすずりの流入や小学校での書道の授業の減少といった構造問題は容赦なく追い討ちをかけていた』そうです。
つまり、元の状態に戻れたとしても、別の問題が発生したり、いずれ同じ状態に陥ってしまう結果だったりする可能性は、大いにあったのかもしれません。
そして、ここで着目すべき視点が『つながり』なのではないかと感じられる紙面になっています。
続きの文章では、『震災を機にビジネスモデルの転機をめざした』『すずりの原料である玄昌石をレストラン向け食器や工芸品、マウスパッド、住宅用外壁に使うことを試みている』と紹介されています。
このような工夫ができたのは、『熟練した職人が手作業で加工し、付加価値を高めている』という強みが可能だったからであり、さらに『ただ復旧するだけでなく、次の一手を繰り出す余力ができたのも基金あってこそと言えるかもしれない』ことは、資金が必要なかったなどとは決して断言できないでしょう。
このような、高い技術と資金があったからこその事例からは、何か一つだけしか持たない状態ではなかなか難しい状況を改善するのに非常に有効だと気づくことができそうです。」
「以前と同じ状況」とは、必ずしも「以前と同じ」だとは言えないものです。同じものがある状態に戻せた、直せたとしても、間違いなく「時間」は進んでおり、以前にはなかったものができてしまった、以前にはなかった状況が生じてしまったなど、いろいろな場面で「違い」が出てくる可能性があります。
では、「元に戻した」ことですべて成功だとすることはできないのであれば、どうすべきなのかと考える必要がありそうです。例えば、新しい分野への進出だったり、多くの人が体験できる機会を増やすことだったり、または、何かをやめたり壊したり、といった決断も考えられるかもしれません。
この記事は、ある部分では元に戻せたことを「改善」としつつ、さらに成功に向かって進むため、別の部分では「挑戦」を続けることも重要だと感じられる事例だと思います。
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